【回想】ぼくとオーク、オークとわたし

みんなが帰ったあとの倭国EMホール。

冒険者達の熱気の名残が徐々に薄らいでゆくのを感じながら、カナタは緑色の扉を押し開く。

すぐそこに広がる海から涼やかな風で、まとわりつく疲労感を洗い流しつつ、カナタは通りを挟んだ真新しい建物『Wedding & Event Office』に足を踏み入れ、その未だ殺風景な部屋の中に置かれた椅子にもたれかかるように腰を下ろした。

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「ふぅ……今日は激しかったなぁ」

吹き抜ける風に身をゆだねつつ、カナタは回想にふけるのだった。

………………
…………

 

ステージの上のSwanson(スワンソン)はいつになく張り切っている。そろそろブリタニアの地に到着するらしいプロ執事集団の噂に触発されているのかも知れない。今回、ぼくはそんなスワンソンに表舞台を明け渡し、陰からこっそりみんなの冒険を見守ることに徹しようと思う。

彼は集まった冒険者に対し、胸を張って宣言するのだ。

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「今回皆さま方にはジェロームの片隅に住む、ある錬金術師の元に赴いていただきたく存じます!」

今回は新薬を開発している錬金術師の家に赴いて、その材料集めを手助けするのが目的とのこと。冒険者達はろくに詳しい話も聞かず、スワンソンが開けたゲートに次々と飛び込んで行く。いつもながら頼もしい!

そして到着したのはJhelom(ジェローム)を構成する小さな島の片隅、そこにぽつんと建つ質素な家だった。その家の前で待つのは錬金術師の妻、Antoinette(アントワネット)。

「お手伝いさん達がいらしたわよ~!」

研究に勤しむ夫を呼ぶアントワネット。

冒険者の間に「お手伝いさん」扱いに対する困惑が広がるも、そんなことは意に介さない奔放な雰囲気の彼女だった。

そして現れたのが問題の夫――Frantz(フランツ)だったんだ。

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「いつかは、みんながあっと驚く大発明をして、私の名声をブリタニア全土に知らしめ……」

いかにもダメそうなパターンに、冒険者達の間からは早くも不安の声が漏れ聞こえてくるけれど、そんな彼らに追い打ちをかけるように、フランツは右手に持った怪しげな本を高々と掲げた!

「これさ! 奇天烈大辞典!!」

本人いわく、Lycaeumの本の海から探し出してきたというこの本には、夢のような薬のレシピがぎっしり詰まっているらしいのだ。なぜかいとも簡単に譲り受けることができたこの本を得意満面に掲げるフランツに向けられるのは、しかし冒険者、そして最愛の妻アントワネットの冷たい視線……。

「きてれつ大辞典・・・?」
「キテレツ大辞典…ザワザワ」
「キテレツ大辞典!」
「馬鹿だw」
「マジかwww」
「(´Д`;)」

様々なあきれ声が聞こえるけれど、なぜかみんな奇天烈をカナで言うクセがあるみたいだ。もちろんぼくにはその理由は見当も付かない。……漢字が難しかったのかな?

それはともかくこのフランツ、どうやら大まじめなようだけど、アントワネットによって明かされる過去の失敗作……飲んだ者を激萌えキャラレベルのパッチリおめめにしてしまう「ビッグ・アイ」、蛇のウロコに覆われたステキな美白肌を作り出した「美白王」……あきらめの空気と共に、アントワネットに離婚を勧める声があちこちから起こる!

慌てるフランツは、これらの失敗は正確な材料を集められなかったからだと力説! だからこそ……次の薬を成功させるためにも冒険者の助けが必要なんだとさらに力説! そしてその薬のすばらしさをまだまだ力説!

「……暑さにも、そして寒さにも負けない丈夫なカラダ!」
「バカじゃなくても風邪をひかない完全健康体!」
「まさに鋼の肉体を作り出すこの薬!」
「健康ブームの主役はオレのもの!」

「名付けて『バカになれ』!」

冒険者達の反応をみてみましょう……

「嫌な予感しかしない・・・・」
「ダメじゃん」
「ぅゎぁ」
「www」
「バーカバーカバーカ!」
「阿呆。。。」
「それ薬いらないっすよ」

さすがに可哀想になってきたぼくの耳には、アントワネットの天使のような声が飛び込んできたのだ。

「これで最後……ですからね?」

ぼくはもちろん、冒険者達も耳を疑ったけど、それと同時に「ダメなら離婚」コールがわき起こる!

こうしてなんとか背水の陣ながら、ようやく材料探しに出発することになったフランツと冒険者達。

彼らは早速必要な素材「元気タマ」が隠されているというオーク洞窟(Orc Cave)に向かったんだ。

……オーク洞窟。

歴戦の冒険者たちにとっては、鼻歌交じりに闊歩できる……はずの洞窟だったんだけど……。

今日のオーク洞窟はひと味違った。どうやら動きを察知したオーク族が防御を固めていたようだ!

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いつもは開け放たれている場所が閉ざされ、その場を守る強力なタイタンに困惑しながらも撃退、先を急ぐ!

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そうして次の階層に進んだ冒険者達に、今度はどう見ても尋常ではない強化がなされたオーク達が襲いかかったのだ!

負傷者が続出……しかし、そんな中でも冒険者達は冷静な目を失わない!

普段見慣れないチェスト……そしてその中には謎の言葉が記された書物が隠されている。しかも一つじゃない! フランツの元に集まる情報はどんどん増え、すでにそれは六冊にのぼっていた。

はやる気持ちを抑えきれず、さらに奥へと向かうフランツと冒険者達だったけれど、最奥へと続く道もまた怪しげなチェストでふさがれ、真っ赤な血の色に染まったタイタンが立ちはだかる!

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しかし、勢いづく冒険者達を止められる者など存在しない。この最後の関門も突破し七冊目の本を手に入れた一行はついにオーク洞窟最奥へと到達したんだ。

そしてそこにはひときわ変わった素材で作られたらしいチェスト……そして、またしてもそれを守護するタイタンが現れた。

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酸をまき散らし、荒れ狂うタイタンに身体を焼かれながらも果敢に戦う冒険者達!

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数分後……なんとかこのやっかいなタイタンと、取り巻きの強化オーク達を一掃した冒険者は、残された最後のチェストを覗いた。……元気タマが入っていると思われたそこには、しかしまたしても一冊の本が。

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フランツが周りに集まる冒険者達に、それを読み上げる。

『勇者よ』
『散らばった言葉の頭を紡ぎ』
『血を流す我が戦士にこれを捧げよ』

……?

このほかに見つかった七冊の本には、謎めいた言葉が記されていたはず。それをつなげても特に意味はなさないみたい……。ならばその七冊の本に記された謎に答えてみよう!

ダンジョンの一番奥で、なぜか繰り広げられる謎解き合戦。

そしてしばらくの時が過ぎ……無事暗号を解読した一行は、議論の果てにたどり着いたキーワードを手土産に「血を流す戦士」の元へ向かったのだ。

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そして、勇敢な戦士がそのキーワードを「血を流す戦士」に向かって唱えると……その姿はかき消え、隠された地へとテレポートしてゆく。それを見た一行も我先にとその言葉を唱える。

「Viva Orc!」

飛んだ先は、閉ざされた砂漠。

そして待ち受けるは……オーク大魔神

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度重なる戦闘に、既にいくらかの冒険者達は、何を探しに来ているのかすらわからなくなっているみたい。

でも、十字に地面を切り裂く烈火をものともせず、ひたすらに剣を振り下ろす戦士達、魔法を浴びせ続ける魔術師達、勇猛なペットを差し向けるテイマー達! そしてお散歩さん達も一生懸命逃げ惑う!

そしてついに倒れる、オーク大魔神

フランツはその骸から、ついに念願の「元気タマ」を手に入れ、冒険者達と共にアントワネットの待つ家に凱旋したのだ!

……このあと、フランツは念願の新薬「バカになれ!」を完成させるものの……

街の人には受け入れてもらえなかったり

仕方がないからアントワネットが実験台……いや、モニターになってみたり

なぜか彼女がオークになってみたり

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オークになってしまった彼女からの求愛を冷酷に断って、冒険者達から容赦のない罵声を浴びせられるフランツだったり

現地から冒険者の声をお届けします

「コラー!」
「!!!!」
「ひでぇw」
「えええええええええ」
「(´Д`;」
「ひどい」
「あほーー!!」
「燃やせ」
「最低だな!!」
「○すべきだと思う」
「旦那最悪だ!」
「殴っていいぞw」
「シ●ル!出番だ!」
「し、しどすぎる」
「最低だ!」
「○○○○○○○○」

などなど

※ 注 「○」にはちょっと殺伐なあの漢字が入ります。あ、言っちゃった。

でもなぜか涼しい顔で話を変えてみたりするフランツだったり

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と思ったら、自ら「バカになれ!」をあおり、オークになって……あらためてアントワネットにフォーリンラヴしてみたり

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アントワネットもオークフランツにみとれてみたり

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そして……

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ハッピーエンドを迎えてみたり!

……そんなドタバタ劇みたいな今回の出来事だったんだ。

正直みているだけでも疲れたこの夫婦。

もう関わり合いになるのはよそう、そんな風に思いつつ戻ってきたEMホールで、思いがけない声が聞こえてきた。

「今日のフランツとアンは今後また会えるのでしょうか」
「会いたいねw」
「あのキャラはいい」

そして、他の冒険者たちからも賛同の声が聞こえる。

妙に感心しながら、オークになったふたりの顔を思い出す。

みどりのフランツとピンクのアントワネット。

そして、ぼくの脳裏には仲良く手をつないで、再び僕らの前に現れる彼らの勇姿が、自然に浮かんできたんだ。

………………
…………

向こう、EMホールの方からスワンソンの呼ぶ声が、カナタの回想を中断する。

「やれやれ、スワンソン……張り切ってるなぁ……よし! 片付けしよう!」

粗末な椅子から元気よく立ち上がったカナタは、背中を海風に押されながら

EMホールに向かって駆けだした。

 


あらためまして、カナタです。

イベントにご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。

今回は戦闘もストーリーも盛りだくさんなところに、謎解き要素まで詰め込んでしまい、混乱された方も多かったのではないかと反省しきりです。

なかなかオリジナルイベントを開くことができずにたまったエネルギーが凝縮されたものということで、ご容赦くださいませ。

また当日は、イベント本編終了後に、EMホールにてMeet&Greetも開催させていただき、遅い時間まで皆さまが活発にぶつけてくださった、ご意見、ご感想は大切に、今後に役立ててゆきたいと思っております。

この日出現したリワードアイテムや、小道具の本などは、現在突貫工事中のEMリワードホールに後日展示予定です。ホール会館のお知らせは当サイトにて行いますので、チェックの方、よろしくお願い申し上げます。

それではまた、次回イベントでお会いいたしましょう!

 

EM Kanata

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