カナタはあせっていた。
盛大にクイズ大会「第一回 倭国諸国漫遊謎々競争 in Malas」が開催されたのは、そう、1月26日のことである。
その後も節分だバレンタインだと浮かれているうちにすっかり忘れていたのだ。
……確かイベント終了の時、結果をサイトに掲載すると言ったような気がする。
思い出したのは昨日の夜。
必死で記録をあさり、回想録を執筆するカナタの傍らには、数時間も前に執事スワンソンが給仕した珈琲が。
文字通り冷ややかにカナタのお供をしているのだった。
………………
…………
さあ! 今日は待ちに待った第一回の諸国漫遊謎々競争だ。
悪いけど、張り切っている。
証拠写真を掲載しよう。
ところはマラス、倭国リワードホール前。
飾り付けを終えたぼくは、ひとり司会席に陣取り、雄叫びを上げていたのだ。
イベント名は奇をてらって漢字を並べ立ててみたものの、要はクイズ大会。こんなベタなイベントにみんな来てくれるだろうか? 来てくれたとしても、ぼくの作った問題で楽しんでもらえるだろうか?
不安はつきなかったけど、開始直前には続々と冒険者達が詰めかけてくれた。
こうなったらあとはやるだけ!
こうして始まった謎々競争。
でも、悲しいかな、これ、競争なのよね?
どこかで聞いたようなセリフを心の中で呟きながら、まずは人数減らしの定番「○×クイズ」コーナーの幕を切って落としたんだ。
まずは練習問題。
「ワタクシ、かなたが一番好きな色は?」
本番だったら大ブーイングかもしれない難問で参加者の頭をほぐしにかかる。でも、倭国のEMホールの色、グリーティングサッシュの色に思い当たる強者も何名か……そう、答えは「緑!」
やっぱり自分に関する問題を正解してもらえるのって嬉しいな。そんな自己満足に浸りつつ、本番へ。企画としては毎回どこかの地方や都市にスポットを当てていこうというこの大会。今回はマラス全域をテーマにした問題を出してゆく。
「ルナの中心部には、様々なお店が集中しておりますが……当然宿屋がある!?」
ぼくはいっつもウィンドウショッピングでぶらぶらするだけなので、意外に難しいはず、と思っていたのに意外なほど多くの人があっさり正解を出したのにびっくり。やっぱりみんなよく見ているものだ。
いつも寝泊りしてまーす
利用者結構多いんじゃないかな
みんなよく泊まってたよ
みなとまってるし
住んでる人多そう
今のはサービス問題だな
ちょっぴり、くやしい。
で、それでも間違えた人もいるもので、そーゆー人は……退場!
出でよ! ミニオン!
見た目の割にてきぱきと、かつ紳士的に不正解者を会場外に送り出すミニオンに、みんなも喜んでくれているようだ。よし! 本採用! 次回からもがんばっていただこう!
こんな感じで次々と問題が続く。
「ルナ城内の東側を南北に走る大通りがありますが……今現在、東側の城壁沿いに建っている冒険者の建物は6軒である?」
ホントに多くの人が何度も何度も見ているはずの街の風景だけど、これはなかなかの難問だったみたい。2問目なのにごっそり減って、すこしドキドキ。
「なんともごっつい城壁で守られているルナの街ですが……歩いて出ることが出来る出口は5カ所である?」
意外と抜け穴を知らない方多し。
ほくそ笑むぼく。
でも2問目にしてごっそり減った会場を目の当たりにして、ぼくは少々怖じ気づいた。ルナに関する次の問題も難しめだったので、ちょっととばすことに!
「牛の楽園、Labyrinthに関する問題です!」
牛!
牛w
でた牛
うし~
ビーフ
モーモーランド
なぜか盛り上がる場内……?
「さて、Labyrinthの中には、過去の文明の痕跡とも思える様々な建物が建ち並びますが、見事に中はからっぽです。しかし、この最奥の邸宅だけは貴族の住まいさながらの内装が施されている?」
実際見てみると、ほぼ空っぽなんだけど、確かに他とちがって装飾付きの机なんかも放置されてあって、迷ってしまった人もいるみたい。でもここは司会者として毅然としなきゃ!
「ワタシが法律です!」
こんな暴言にも笑顔と喝采で答えてくれる倭国民に大感謝のぼくだったんだ。
「このダンジョン、離れ小島の岩山の中にございますが、実はこの岩山の裏手には、小さな洞窟がある?」
意外とこういうのが難しい……。記憶にないけど、見落としたのか、それともそもそもなかったのか? 意地悪だなぁと思いつつの出題だったけれど、それでもやっぱりみんなは盛り上がってくれる。
ここで、気分を変えて、ぼく好みのこんなジャンルへ。
「栽培部門からの出題です」
個人的に好きなガーデニングだから、あんまり意識はしていなかったけれど、このジャンルの問題もわからない人には全くわからないようで……。
「リュウゼツラン、漢字で書くと竜舌蘭。やはりこれは蘭である?」
見事にわれる回答!
「マラスにはブリタニア本土と同じくオークの木は生えているが、クルミの木は生えていない?」
これも難問……といえば難問なんだけど……実は。
「すぐそこ、リワードホールのすぐ横に……」
そう、生えてるんです。せめて会場の周りくらいは確認しておくべきではなかったか? と、無茶なことを呟くぼくだった。と、そこにするどい発言が!
○にするには全土を歩かないとだよね…
逆に生えてないのを確かめるほうが大変だよね・・・
ないってことを証明するのはむずいもんね
その通り! もし生えてないという答えにするならば、ぼくがマラス全土をくまなく調査して、生えてないことを確認しなくちゃならない。……んだけれども、この発言はいただけない!
かたなんがそんな面倒な事をするはずがないっ
言い返せないぼくが少し悲しい。
そしてついに、○×クイズは最終問題へ!
「この倭国が生まれたのは1998年9月である?」
倭国愛を再確認すべく出したこの問題。○と答えたのはお一人のみ! もし○が正解なら決勝戦がなくなってしまうという窮地に立ってしまうぼく……だったけど、答えは×!
こうして、無事に○×クイズを終え……決勝進出の勇者はこの6名!
(左から)Julliaさん、Leiさん、Natsuさん
orangeさん、Teeswaterさん、WoWさん
この6名の勇者を待ち構える決勝戦とは……
「早押しクイズ!」
「先に五問正解した方の優勝です!!」
しかも記述式での出題となるため、ぐーぐる先生でもなんでもOK! とにかく早いが正義というスタイルで決勝はスタートだ!
「さっきも出てきましたダンジョン「ラビリンス」ですが……英語で正確に書いてください!」
Natsuさんがいち早く正解……と思いきや、無念の綴り間違い! しかもぼくもそれを見過ごすという波乱含みの幕開けだったけど、Teeswaterさんが見事先取!
「先ほど○×クイズで出てきましたリュウゼツランですが……一般的に、この種の植物を原料として作られているというお酒はなんでしょう?」
電光石火でJulliaさんが正解! 呑みながらの参戦とのことで、そのかっこよさにほれぼれするぼくなのだ。
そしてその後もクイズは順調に進み……
Teeswaterさん抜け出す!……と思いきや
Leiさんが怒濤の追い上げ、そして逆転!
こうしてみると、TeeswaterさんとLeiさんの一騎打ちに見えるのだけど、実際はどの問題もかなりの接戦だったんだ!
色ゴザが前に進まなくて後ろ向いちゃってるWoWさんも、紙一重の差での正答がたくさんあったし、orangeさんは職人部門のマニアック問題で力を発揮! Natsuさんは栽培部門で見事正解!
写真ではわからない白熱の戦いがつづく!
三原理と八徳についての問題や、酒に関する問題、スフィンクスの問題などもはさみつつ、そろそろ心許なくなってきた問題のストック!
そんな時は苦し紛れの「かなたんマニアックス」クイズ! (罵声で)盛り上がる場内!
「さて、少々今回のイベントの裏話でもいたしましょうか……」
「この会場、どことなくバッグボール会場を彷彿とさせます」
「本当は、ルナの南にある、立派な木造のバッグボール会場で今回のイベントは開催される予定だったのです!」
「しかし、襲いかかる予定外の出来事!」
「さて、ワタクシかなたは、あの立派な、観客席もきちんと設置されたあの会場での開催をなぜ断念したのでしょう?」
観客席を見回すと、わかる人はわかっているみたい。うん、一度でもあそこでイベントをしようとしたのなら、わかること。
答えは「声が届かない」、そして正解者はTeeswaterさん。これでついにLeiさんとTeeswaterさんがあと一問に並ぶ!
それにしても、あんないい感じの場所なのに、観客席とフィールドで、声が届かないというのはホント残念。それがなければあそこでもっと楽にイベントの準備ができたのに……という私怨に基づく出題だったけど。……まあ、こういう不完全さもブリタニアの魅力かな?
なんて無理矢理思い込んでみるぼくだった。
そして、終わりはやってきた。
「マラスの砂漠の果てには、あるひとつの墓があります」
「そこにはあるものが供えられています」
「そのあるものとは何?」
……
Teeswater: いかり
第一回 倭国諸国漫遊謎々競争 in Malas
Teeswaterさん、優勝決定!
おめでとうございます! Teeswaterさん!
そして、出場者全員の健闘をたたえつつ表彰式。
なんかこういうの言ってみたかったんだ。
そしてTeeswaterさんのひと言!
『すっきり爽快です!』
どうやらTeeswaterさんの素早い解答の原動力は「早くトイレに行きたい」だったようで……。
そして、今回Kanata's Minionとしてお手伝いして下さったSakuraのEM Nekomataさんにもごあいさつをいただいて……そしてみんなで記念撮影を。
みなさんありがとうございました!!
ふぅ……心地よい疲れ。
みなさんにはEMホール方面へのゲートを出してお見送り。これから記念のプレートをリワードホールに飾らなくっちゃ……ん? 誰かがゲートから戻ってきてぼくに耳打ちする。
みんなホールに集まってるので、何か一言解散の挨拶くらいしたほうがいいかも?
な……なんだって!?
とりあえずEMホールに急ぐぼく。
!!
30名以上の方がお集まりに! ……よし、やるか!
というわけで、密かに謎々競争番外編が開幕してしまったんだ。
残った問題もおおかた放出!
次回のためにストックしようと思ってたのに……なんてマッタク思ってなかったんだよ!
そして、これの正解者が優勝となる、番外編最後の問題は……もちろん「かなたんマニアックス!」(怒号飛び交う)
いつもおいしい珈琲をいれてくれる彼を最後くらいは持ち上げよう。
「倭国EMホールの執事といえば?」
すわんそん
すわんそん!!
すわんそん
セバスチャン
swanson
……だれ? セバスチャン。
というわけで、倭国諸国漫遊謎々競争番外編優勝はこの方!
Snifkinさんでした!
こうして今度こそ、イベントは終わったんだ。
みんな、ありがとう。
…………
………………
なんとか書き上がったらしい原稿の上に突っ伏して眠るカナタの横、冷たいコーヒーカップを引き上げる手が。
「お疲れさまでございます。カナタさま」
執事スワンソンは小さな声でそう言ってコーヒーカップを取り替えると、温かく香りが匂い立つ珈琲をそっと注ぐ。
そして、その香りがカナタの鼻に届く頃、彼はいつもどおり、ゆっくりとEMホールの階段を降りてゆくのだった。
あらためまして、カナタです。
回想記事が少々遅くなってしまい、申し訳ございません。その分これからつづく、バレンタインイベント、ひな祭りイベントにも力を注いでおりますので、どうかご容赦を。
それにしても、我ながら楽しいイベントでした。
問題を作るためにマラス各地を奔走いたしましたが、やはりこの世界は素晴らしい。至る所に作り手のちょっとしたお遊び、工夫が入っていて、その理由を想像するだけでも楽しめます。
この倭国諸国漫遊謎々競争も、以前行いましたチキリザマスターズ選手権と同じく、恒例のイベントに育ててゆきたいと思っておりますので、よろしくご声援の程、お願いいたします。
実はイベント終了後、あるプレイヤーさんからご意見をいただきました。次回から問題も募集したらどう? とのこと。
なかなか楽しそうな試みです。応募した人がやたら有利になったりしないよう、やり方を精査しつつ検討させていただこうと思います。ご意見ありがとうございます。
なお、今回もマラスにあるリワードホールに、優勝記念プレートと、記念本を飾らせていただいております。この手のイベントでは、お持ち帰りいただくアイテムなどは基本ございませんが、ホールに名前が刻まれるのも、それに負けない良い記念になると思います……というかなってほしいと思っておりますので、次の機会もたくさんの方のご参加を心待ちにしております。
ご参加いただきました皆さまに、心から感謝申し上げます。
本当にありがとうございました!
EM Kanata