【回想】それぞれの使命

冒険者の皆さま、暑い中いかがお過ごしでしょうか?

倭国EMホールにて執事を勤めさせていただいておりますSwansonでございます。

先日このブリタニアに、ひとりのガーゴイルの少女が現れたとのこと。どうもただならぬ覚悟と使命を持ってやってこられたようでしたが、どうやら無事、冒険者の皆さまのご協力を得られたと耳にしております。

ブリタニアの混乱、エクソダスの復活、そしてテルマーの災厄と続く大きなうねりを形作る、これもまたひとつの欠片であるように思います。

冒険者さまよりのご報告を元に、わたくしスワンソンが簡単にまとめさせていただきましょう。


冒険者を募る謎の文章がブリタニアを駆け巡った数日後、Destard南に広がる沼地帯の一角に彼女は現れた。

傷ついた彼女は、すかさず駆け寄る冒険者の手当を受けながらも、名乗る間も惜しみ集まった冒険者に懇願する。

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「わたしはなんとしてもあのブライトボーンスライムの残骸を集めないといけません!」

「どうか……助けて!」

いきなりのことに戸惑うものの、彼女が駆けてきた沼地から既にそのあとを追う緑色のスライムの集団が迫ってきているのを見るや、冒険者達はリスタをかばうようにスライムの群れに突入してゆくのだった。

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しかし、威勢よく突撃した冒険者を待ち受けていたのは、緑色のスライムだけではなかった。沼と同化するかのような身体を持つ毒々しい葡萄茶の物体が冒険者達にまとわりつく。

「なっ……プレイグビーストか!?」

確かにその形はプレイグビーストのそれであったが、その醜悪な色は冒険者の背筋を凍らせる。それでも果敢に武具を振るう彼らであったが、それをあざ笑うかのように葡萄茶の悪魔は声なき呪文を唱え、死した仲間を甦らせ冒険者に襲いかかった。

冒険者側にも深手を負う者が続出するも、さすがに歴戦の強者たちであった。

ひるむことなく戦い続ける勇者達は一匹、また一匹と強敵を突き崩し、ガーゴイルの少女が望むスライムの残骸を集めることに成功したのだ。そこで一旦、冒険者達は彼女と共に安全な場所へと下がった。

傷ついた身体を癒やすべく包帯を巻く音、呪文の声があちこちから聞こえる中、ガーゴイルの少女は皆の真ん中に立ち、凛として自分の使命を語りはじめたのだ。

「……わたしはリスタ。テルマーから来ました」

「あなたがたに助けを……乞うために」

口調の重さに、治療を続けていた冒険者たちも手を止め、彼女の顔を見る。

そんな空気の中彼女が語ったのは、テルマーを襲う疫病の存在と、それを隠し、罹患者を隔離したまま、なすがままに任せているザー女王の行動だった。彼女は女王の女王としての使命を理解しつつも、倒れゆく同胞達を見捨てるが如き方策に従うことができず、ブリタニア冒険者達の助けを求めにやってきたのだった。……女王の命に背いてまでも。

薄汚れたローブを羽織っているものの、少女らしからぬ威厳と、その強い光をたたえる瞳は、彼女のただならぬ素性を皆に感じさせずにはいられない。

そんな彼女は冒険者達に、惨状を自身の目で見てほしいと懇願し、ゲートを出現させた。本来自分たちには直接関わりのない遠い異国のことであるのに、冒険者達はためらいもなくゲートをくぐってゆく。

その先はドラゴンウルフ村。今は鉄柵で囲まれ、立ち入りは禁じられている。

もちろん、その鉄柵が放つ異様な雰囲気から汲み取るまでもなく、そこが病人を隔離している地であることは一目瞭然だった。……彼らが到着した今この瞬間でさえ、ガーゴイルのうめき声があちこちから聞こえ、目の前で倒れ、死んでゆくのだから。

リスタは街に入ったところで、再び語りはじめた。

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「ここでは今も弔いの言葉を捧げる間もなく、次々と……次々と仲間が倒れてゆきます」

「彼らを外界から隔つ柵は、絶望の象徴に見えたでしょう。そして……その彼らの眼に、柵の外で何もできずに佇むわたしのことは……いったいどのように映るのでしょう?」

自分の無力を呪うがごとく語る彼女だったが、ふと顔を上げた。

「そんな時でした。その絶望の柵の中、ただひとり倒れゆくガーゴイルに手をさしのべる人物がいるのに気がつきました」

彼女は柵の中に視線を向けながら語ったのだ。漆黒のローブをまとったそのヒーラーが、この疫病――老廃病の治療薬を開発したこと、しかしその材料が集まらず、治療がいっこうに進まないことを。これでようやく、ブライトボーンスライムがこの治療薬の材料のひとつであること、そして、彼女が冒険者達に頼みたいことの全体が明らかになったのだ。

ザー女王の女王としての徳を信じつつも、自分にできること、使命を遂行すべく冒険者たちに膝を折り懇願するリスタ。やがて、彼女は立ち上がり、冒険者達を誘いつつ街の奥へ……。

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煌々と美しい炎を上げる薪を背にリスタは冒険者達に向き直った。

「この炎は仲間を焼く炎」
「今死んだ者が次死ぬ者に焼かれる」
「次に倒れた者はその次倒れゆく者に……」

彼女の後ろで揺らめく炎は、彼女の、そして焼かれていった者達の焦燥を表すように冒険者達の心を焦がす。

「わたしは母……いえ、女王の命に背いてでも」
「ただ、この連鎖を断ち切りたいの……」

気丈なその瞳がほんの少し潤む。

「……どうかみなさん」
「わたしたちを」
「死に逝くガーゴイル達を」
「助けてください」
「お願い……します!」


 

以上でございます……少々長くなってしまいましたな。

リスタという少女は、強い使命感を持つ素晴らしい少女でございますな……。

しかし、この世は彼女だけでなく、皆さまを含めた全ての方々の使命や宿命、そして運命が絡み合って動いてゆくものと存じます。

ならばこそ、この先どうなるものやら、一介の執事であるわたくしには想像もできませぬが、運命はより多くの方々の心が向かう方に傾きやすいのも否定はできませぬ。

皆さまのご決断が……よりよき、後悔のない方向を向くことを。

わたくしは祈ってございます。

 

倭国EMホール執事 Swanson


ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

さて、今回はライブイベントの幕間のミニイベント的なストーリーでしたので、時間も短く、戦闘も軽めで、拍子抜けした方も多かったかも知れません。

でも、リスタという少女のことを、今のテルマーの現状を心に刻んでいただくべく、彼女の語りを中心とした形にしたというのも事実です。

テルマーだけではなく、ブリタニア、イルシェナーの全てを巻き込んだ大きな流れは、これから佳境を迎えてゆくことでしょう。そして、リスタもまたいつか皆さまの前に現れることもあるでしょう。

よりよき未来のために、これからもみなさんの力が必要です!

次回もどうぞよろしくお願いいたします。

 

EM Kanata